正当な報酬

はてな匿名ダイアリー: 頭のいい人が成功できるかどうかの境目
Life is beautiful: その「頭がいい人は成功して当然」という発想が甘すぎる
ちょっと遅いし、非コミュ論なんて素人ではあるのですけれども。
大本は「正直な話、学歴コンプレックスはほんと対処が大変です」という匿名ダイアリーの話題から始まっていて、「頭がいい人はやっかみから身を守るために非コミュになりがちだけど、非コミュだと成功できない」という体験談が上の元記事。それだけならまあ穏健な話題で終わったのだろうけれど、「Life is beautiful」の中島聡氏が下のエントリで元記事の作者氏(以下増田さん)の変なスイッチを押してしまったために、大変なタワーリングインフェルノになってしまったというお話。
同じはてな界隈でちょうど1年くらい前に流行っていたのが内田樹センセの「不快という貨幣」で、今回の増田さんの言動を見て何気なくこの内田センセの仮説を思い出した。内田センセが主眼としていたのは非コミュではなくて学びや労働を放棄しちゃうニートで、超のつく学びのエリートである増田さんとは対極ではあるのだけれど、「不快という債権」が払い戻されない問題という点では共通項があるのでは。
増田さんをはじめとする非コミュエリートたちは、周囲のやっかみを避けるために非コミュに陥ったことを悔いる。何故そもそも「周囲のやっかみ」が起こるのかという点を内田仮説に置き換えて考えてみると、非コミュエリートたちは「学び」という不快に耐えることでさぞかし「不快という債権」を溜め込んでいて、いずれはそれを払い戻して豊かな「長者様」になる…それを羨む「学歴コンプレックス」と呼ばれる人が少なからずいるからでしょうね。そして非コミュエリートはその目を恐れ、「債権」を塩漬けにしてたらインフレが来て不当な報酬しか払い戻せず、「債権」の額面では劣っていたはずの「要領のいい人」は人目を気にせず逐次換金しちゃってたので多額のキャッシュが手に残ったと。おそらく増田さんなら「自分にとって学問は不快などではないからその仮定は成り立たない」と言うだろうけれど、ま、ひとつの観察として。
紛うことなき非コミュの人であり、エリートではないけれど大学院に籍を置いたことのある編集人としては同情に堪えない話ではある。しかし、ふと疑問に思ってしまったのは「増田さんたちってどうして院生になるまでキレないの?」という点。編集人はそもそも大卒があんまりいない家系で放任気味に育ち、突出することにあまり意味を見出せない付属校に通ったので、家庭でも学校でも学びに対する「正当な報酬」は得られそうもなかったせいか、早々にメインストリームから外れて人に羨まれることのない学問ばっかやるようになったんですが(アメ文とかな!)、増田さんたちがそういうラクな方向に行かないのは、ある意味家庭やエリート進学校から「正当な報酬」を得ているってことなんですかね。その辺はちゃんと研究してみると「不当な報酬」しか与えられず荒んでしまう若者への処方箋があるかもしれないし、逆に「正当な報酬」を得続けることの影響も見えてきそうで面白いやも。