時はメタルテープの螺旋のように

えーと。音楽にお金を払わなきゃいけないっておかしくない?
最近の若者は日本の文化を殺そうとしているのではないか
一億総エグザイル化社会 - 【B面】犬にかぶらせろ!
「最近の〜」の増田は釣りだと思うけれど、こういうことを言いたくなるお年頃のおっさんがリアル厨房だった頃、つまり90年代半ばっていうのは再生メディアの世代で言うとレコードからCDへの移行が終わり、カセットテープがMDに取って代わられるあたり。レンタルCDも産業として軌道に乗り始めていて、餅月あんこ(76年生まれ)の漫画に出てくる某キャラのように「週末はツタヤで借りたCDでベストテープ作るのが趣味」なんていうのが、比較的よくあるというか、むしろ「まっとう」な音楽好き中学2年生の姿であったように思う。
ほいでもってそのベストテープを貸し借りする中で特定のミュージシャンを「布教」したり、自分の仲間内でのポジションを主張していったりしていたわけで、おっさんにとってはケータイやP2Pを通した00年代のカジュアルコピーを笑えないどころか、「時代は繰り返す」とか「若者には金がない」という10,000年も昔から変わらぬザ・グレイト・マンデラな真理を再確認するだけなんじゃないかと思うのだが如何。昔も今も倫理観の欠如がそこにないとは言わないが、それ以前に、貧乏と音楽への中2的愛情があったのだ。そして、そうした私的録音の濫用が作り上げた中2たちのスフィアの向こうにフリッパーズ・ギターユニコーンブルーハーツがいた。彼らの成功はCDだけで作られたのではなく、その何分の一かは、近所のすみやで買ったハイポジション・テープと、東芝Rupoで印刷されたインデックスでできていた。
そんな中からいつしか、コピーに飽き足らないというか他人からコピーしてもらえない、違法DLにも出回らないようなものが好きになる人々、つまりヲタというちゃんとカネ払う連中が育つわけで、そうして成長してきたおっさんヲタがリアルコピー厨を叩くのだとすれば、それは政治的にイケてないと言わざるを得ない。文化の守護者気取りで未来の守護者候補たちの芽を摘む愚を犯すよりも、こう言ってやるべきなのだ。「生めよ、増えよ」と。いつしかヲタクは地に満ちて、持ち前の協調性の無さを発揮してエグザイル以外の文化も支えていくことであろう。